診療内容
診療室
■診療方針
当クリニックは精神・心理療法を中心にして、必要最小限の薬物療法を組み合わせて治療を行っています。そのため保険診療であってもなるべく長い診療時間がとれるように完全予約制になっています。
どんなことで相談ですか?
うつ病
■症状:最近、数週間、ずっと気持ちが落ち込んでいる、以前は楽しかったはずのことが今はそう思えない、疲れやすい、仕事に集中できず以前と比べて能率が落ちている、意欲がわかない、イライラする、眠れなかったり眠れても朝早く目が覚めてしまう、食欲がなく痩せてきた。こうなってもっと頑張らないといけないのに、頑張れない自分を責めて、自信を失っている…。
■原因:うつ病にはかならずきっかけ(=原因)があります。多くのきっかけは、最近、数ヶ月以内に起こった生活や仕事上のストレスです。家族に不幸があった、家族内でいざこざが多くなった、仕事が急に忙しくなった、転勤や異動があった、人間関係で問題が起こった……など。こういった最近のストレス(=ライフ・イベント)と、それに対応する自分のストレス対応力とのアンバランスがうつ病を引き起こします。
■治療:うつ病は軽症から最重症まで4段階に分かれています。中等度症以上は、一定期間の服薬が必要です。薬はよく効きます。睡眠や食欲の低下は短期間で回復します。服薬によって症状が少し安定した後は、精神心理療法が治療の中心となります。むしろ、こちらの方が治療の要です。精神心理療法で見いだすことは、自分を許容できること、自分を認められること、自分に課してきた義務感を少しばかり緩めてあげること…などで、これらによってストレス対応力が増していきます。
反復性うつ病 (燃え尽き症候群)
■症状:別名「燃え尽き症候群」とも言います。何度もうつ病を繰り返して、疲れきって、倒れてしまいます……が、うつ病が少し良くなるとまた必死で頑張ります。365日24時間、いつも心に強い緊張と不安をかかえて生きています。その緊張が途切れると、気持ちが落ち込んでいる、気力がわかない、意欲がわかない、疲れやすい、仕事に集中できない、イライラする、眠れない、食欲低下などのうつ病の症状が一気に広がって倒れてしまいます。頑張れない自分、緊張を維持できない自分を責めて、生きいていくのも辛くなります。
■原因:多くの場合、幼少時の家庭内の緊張、家族の中での孤立感が背景にあります。そのために、人に甘えたり、本音を言ったりすることが苦手で、相談も出来ません。仕事や人間関係で困ってしまっても、一人で問題をかかえて、一人で解決しようとさらに緊張しています。
■ 治療:最初はうつ病の治療をします。その期間、服薬をすることもあります。うつ病の症状が一段落したら、精神療法(カウンセリング)へと進みます。自分が生まれ育ってきた家族(原家族)と幼少時の自分の生き方を正確に理解出きるようになうと(自己理解)、自分の生き方が「大変だったな」と納得が出来るようになり(自己受容)、自信がついてきます。そうするとが、症状は消えます。もう、うつ病を繰り返すことはありません。
パニック障害
■ 症状:何の理由も、予告もなく急に激しい呼吸困難・窒息感や動悸が始まり、このまま死んでしまうのではないかと死の恐怖に襲われます。電車の中や映画館など閉塞された空間で起こることが多いですが、静かな自宅の中でも起こります。恐怖の中では何もできません。ただ震えています。二度と起こって欲しくない「発作」です。でも、考えるとまた起こりそうで心配になります。電車の中で起こすと、それ以後、電車に乗れなくなってしまうこともあります。
■ 原因:長く抱えている対人的な緊張感、孤立感が背景にあります。比喩的な言い方ですが、小さい時に「恐いよ、助けて!」と誰にも言えなかった、あるいは言いにくかった体験があったのだと思います。
■ 治療:症状を抑えるのには、精神安定薬やある種の抗うつ薬が有効です。薬はよく効きます。薬の効果が出てきたら、次は、精神療法によって「安定した心」の状態を探ります。自分の抱えてきた緊張の原因が分かると、症状は消えます。最終的には、服薬を終了します。
不安性障害
■ 症状:パニック障害ほど強いものではないけれど、漠然とした不安、不全感、焦り、抑うつなどが広く、長く続いている障害です。このままでいいのかと考えていたり、何かに追い立てられているように生活していたり、身内に悪いことが起こるのではないかとか、何か大きな失敗、不幸を引き起こしてしまうのではないかとか、いつも心配、不安で、不吉なことを考えてしまいます。動悸や手の震え、発汗など身体的症状を伴うことも多いです。
■ 原因:対人的な慢性の緊張、社会的な場面での強い不安、人にどう思われるかが怖い、人前で上手く振る舞えないなど心配をかかえています。それらが始まった時期、強く自覚するようになった場面を探っていくと、原因がはっきりとしてきます。
■ 治療:症状は薬(抗不安薬)で一時的におさまります。根本的な治療は、日々感じている不安の内容を言葉にして表現することから、始まります。自分の不安を、自分の言葉できちんと表現できれば、それだけで、楽になります。これまでの「不安をかかえてきた自分」が理解でき、それがどこから始まったかが分かれば、その先に新しい生き方が見えてくるでしょう。
PTSD (心的外傷後ストレス障害)
■ 原因と症状:自分の存在が潰されてしまうのではないかと恐怖におののいた異常体験から始まります。例えば、瀕死の事故に遭った、地震・津波に襲われた、死の危険に遭遇した、性的な被害を受けたなど、圧倒的な力で迫ってきた恐怖の体験です。PTSD(心的外傷後ストレス障害)はそういった精神的・身体的なストレスの後に起こってくる障害です。押しつぶされそうになった恐怖を忘れられずに、いつまでもそれにとらわれて自分を苦しめます。さらに時間がたつと、いつまでもそこから「立ち直れない」自分を責めて、うつ病になり、苦しみが二重になってしまいます。
■ 治療:対症療法として抗不安薬や抗うつ薬を服用することもあります。特に、睡眠を確保するための睡眠薬は一時期、必須です。根本的な治療は、自分の存在を認め直して行くことです。恐怖に潰されそうになった自分は、「でも、今、生きています」。そして、まだ立ち直れないと自分を責めていますが、その自分をそのままに、ゆっくりと、大切に認めていく作業が回復への精神療法です。
反応性愛着障害/脱抑制型対人交流障害
■ 原因と症状:これらは虐待(ネグレクト)を受けて育った子どもが示す、親や他の大人に対する「異常な」態度です。「反応性愛着障害」の子はころんで擦り傷を作っても痛がりません。周りに助けを求めず一人で痛みを我慢します。また「脱抑制型対人交流障害」の子は、親や大人に対していつも過剰に「媚びへつらって」「おもねって」「過剰な愛着」を見せてニコニコします。しかし、一人になるとまったくの無表情になって深い孤独を抱えているのが見て取れます。いずれも親から愛情をもらえずに一人ぼっちで生きている子の悲しい反応です。この2つの病名は子どもに対する診断ですが、そういう子は大人になってからも同じような対人関係の緊張を持ち続けます。例えば、無理な仕事を頼まれても断れず一人で抱え込むなど、社会に過剰適応しがちで緊張と不安をかかえて疲れ切ってしまいます。その結果、何度もうつ病を繰り返すことも多いのです(反復性うつ病性障害)。
■ 治療:(I). 子どもがまだ小さい場合は①正常な大人と触れる時間を可能な限り増やしてあげることと、②家庭環境の調整が大切です。また、(II). こういった愛着障害をかかえたまま大人になった人々(=被虐待者)に対しては、心の深いレベルのカウンセリングが適用されます。彼らはこれによってみごとに回復する力を持っています。
摂食障害
■ 症状と原因:食べないで自分をコントロールできているとき(拒食)と、逆に、自棄になって食べ過ぎてしまうとき(過食)とがあります。過食の後は、嘔吐をしたり(自己誘発性嘔吐)、下剤を服用したりします。拒食と過食が交互に表れることも多いです。根底に、「我慢をしていないと人に嫌われてしまう」という不安があります。そのために、我慢できない=太ることへの恐怖があり、過食した後に太らないように嘔吐や下剤の使用が伴うのです。この人から嫌われるという不安は、ほとんどの場合は、小学校くらいまでの母子関係に起因するストレス・我慢・緊張に由来しています。それがその後も長く尾を引いて思春期に近づくと症状になるのです。「人に嫌われる」=「母親に嫌われる」という関係があります。
■ 治療:自分をコントロールできない、自分がダメになってしまうのではという大きな不安・恐怖、それが自分と母親との関係の中でどこから生まれてきたのかを探っていきます。これがカウンセリング(精神療法)の軸となります。不安や恐怖はその出所が見えてくれば、それだけで少しずつ小さくなっていくものです。このプロセスで子どもに強い不安を抱かせる母親側の理由もまた見えてきます。
心身症
■ 症状:明らかに体調が悪いのに検査を受けても異常がないと言われる。いろいろな薬や治療法を試したが、身体の症状はあまりよくならない…。自分でも、もしかしたら、どこかで精神的なストレスが身体の症状に関係しているのかも知れないと思うが、はっきりしない…。ストレスだと言われても自分ではその原因がまったく分からない。
■ 治療:心と身体の関係は密接で、複雑です。その間に生まれるのが心身症です。対症療法として(身体に効く)薬を使うことも必要ですが、基本は心の側面からのアプローチです。身体の症状を生み出しているものは、「頑張ろう、我慢しよう」としている自分と「もう頑張れないよ、疲れたよ」と言っている自分のせめぎ合いで、疲れた自分をまったく出せていないことです。頑張る自分が強すぎて心の中で2つの自分の折り合いがつきません。そうすると、無理が体に出ます。心の中に二つの自分がはっきりと見えてきたときに、心と身体の関係も見えてきます。
不眠症
■ 症状:入眠に時間がかかる「入眠障害」と、途中で何度も目が覚めてしまう「中途覚醒」とがあります。布団に入ってから、いろいろ「不眠」について考え始めてしまい、考えれば考えるほど、また眠れなくなって、それが「癖」のようになってしまっているのが、不眠症です。最初のきっかけは、仕事のストレスや精神的な緊張だったのですが、それらのストレスが消えた後も、体に緊張が残っています。すると、眠ろうとすると自動的に体に緊張のスイッチが入ってしまい不眠症が続いてしまうのです。睡眠薬は効きますが、長く飲んでいると離れられなくなります。それも心配で、また考えてしまいます。
■ 治療:生活リズムの変更によって体と心に残ってしまった「癖」を取り除きます。朝夕の軽い運動や食事時間の変更、生活時間帯の入れ替えなどを行います。ある期間は睡眠薬を併用しますが、最後には薬なしで眠れるようになるのが治療のゴールです。
子どもの引きこもり・不登校
■ 症状:引きこもり・不登校とは、次のような状態を言います。「生徒・学生なのに学校に通えていない、あるいは、学校は卒業したが仕事に就けていないなど、その年齢相応の社会的な活動ができずに、主に自宅・自室内だけで生活し、家族以外の人との交流がほとんどない状態」です。これがある期間(数ヶ月以上)続くと社会的引きこもりと言われます。不登校・引きこもりの子は自分から治療に訪れることは、ありません。でも、悩んでいないのではありません。学校に行けない自分、仕事に就けない自分を責めています。その辛い気持ちから逃れるため、目を背けるために、昼夜逆転の生活をして家族との接触を断ち、またネットゲームなどに夢中になって目の前の現実から逃げようとします。問題が解決せず家庭内の緊張が高まって親子の対立が激しくなると、家庭内暴力(次の項目参照)になってしまうこともあります。
■ 原因:大きく分けると2つあります。
(1)多くの場合は、親子関係の問題です。家族内で親子が互いにぎくしゃくしてコミュニケーションがスムーズにできていない、いつも互いに緊張しているなどの関係が長く続いていると、子の側の緊張と不安が慢性的になり、何かのきっかけで問題が発生します。親が子どもに厳しすぎる、あるいは、親が忙しくて十分に子どもを見てあげられなかったなどの背景があります。
(2)二番目は、子どもに「ごく軽度の」発達障害がある場合です。ごく軽度なので学校でも気づかれずにいつの間にか本人が周りの人間関係についていけなくなり、自信を失って家に引きこもってしまうという場合です。
■ 治療:まず、原因を特定します。その原因に応じて治療を行います。
(1)親子関係が問題の場合は親の相談・カウンセリングによって家族内の緊張と不安を和らげます。親子の豊かなコミュニケーションが回復すると、子どもが本音を語り始め、やがては引きこもりから脱していく力をつけて、自分から問題を解決します。
(2)子に「軽度」発達障害がある場合は、子が自ら問題を解決することはできません。障害の程度に応じて周りの環境を整えてあげて(環境調整)、子が持っている能力の範囲内で外に出ていけるようにすることが大切です。
子どもの家庭内暴力・思春期問題
■ 症状:思春期の親子対立、いわゆる「反抗期」は子の正常な心理発達にとって大切なことです。子はこの時期を経過して初めて、一人前の大人(成人期の心理発達)になることができます。それは社会の中での自己責任の確立とか、アイデンティティの確立とか言われます。反抗期を通過できないと、「成人期」へと心の発達を遂げることができません。そうすると、仕事についた時や、あるいは結婚して子育てをしているときなどに自分のアイデンティティが不安定になってしまい、出勤できなくなったり、子育てで悩んで倒れてしまいます。このように心の成長に必須で大切な反抗期ですが、しかし、一方、これが激しすぎるとまた問題です。激しすぎる「反抗期」が家庭内暴力です。子どもの親への執拗な暴力、物品の破壊、執拗な金銭の要求、不登校、非行問題などとして現れます。
■ 原因:激しすぎる反抗期の原因はそれまでの親子関係にあった緊張です。つまり、家庭内の過度の緊張の中で子どもは長い間自分を出すことを遠慮してきました。その我慢が思春期になって自我に目覚めたときに、一気に爆発するのが、激しすぎる反抗期です。
■ 治療:親のカウンセリングが治療の要で、それまでの自分が営んできた「家族」・「親子関係」を見直していきます。それができると、今、目の前で怒りを表している子の気持が見えてきます。気持が見えると、これまでとは違う親子のコミュニケーションが生まれ、この「激しすぎる反抗期」は自然と収まり、子は思春期を成就して大人になり、親子は互いに相手を尊重して、仲良く安定します。
子どもの発達障害
■ 分類:発達障害には、主に以下の4つがあります。
1.知的能力障害
2.学習障害(LD)
3.注意欠陥多動性障害(ADHD)
4.自閉症スペクトラム障害
重度〜中等度の場合は小学校入学以前に気づかれますが、「軽度」から「境界領域」の場合は小中学校と気づかれないまま、様々の問題・不適応を起こしていることがあります。
■ 診断:当院ではWISC-IVなどを含む心理検査も実施していますが、軽度の場合、検査だけでは見逃してしまうこともあります。最も鋭敏な診断は、親から子どもの詳しい日常生活や対人関係の情報を直接、聞き取ることです。具体的には生活態度・学校の成績・友だち関係の持ち方・家庭内で起こすトラブルの内容を聞き取ることでごく「軽度」のものであっても診断ができます。ついで、診断に基づいての環境調整など子の社会的な適応レベルを上げていく対応法を考え、助言します。
配偶者のアルコール問題・ギャンブル・浪費
■ 問題:配偶者(夫、もしくは妻)が、アルコール依存症、浪費(買物依存)、パチンコなどのギャンブル、ゲーム依存症などの問題を抱えて困っている。止めさせようとしても、止めない。そればかりか、かえって激しくなって夫婦間の喧嘩も絶えず、生活が破綻してしまうかもしれないと不安になる。
■ 対処法:まずは原因を特定することが大切です。これらの問題には必ずはっきりとした「原因」があります。例えば、(1)配偶者が生まれ育った原家族の問題(虐待を受けていたとか、幼少期から大きな心の傷をかかえてきたとか)を引きずっていたり、あるいは(2)配偶者自身に発達障害があって見逃されていたり、または(3)配偶者に他の大きな精神疾患が隠れているなどです。これらの原因を特定して、それに応じた対処法を考えていきます。
配偶者の暴力(DV)
■ 問題:DV(Domestic Violence)とは「配偶者などからの受ける暴力」の意味で、次のようなものがあります。
「身体的暴力」(殴る・蹴る・物をぶつける)
「精神的暴力」(暴言・威嚇・恫喝・罵る・無視する)
「性的暴力」(性行為の強要・中絶の強要・避妊に協力しない)
「経済的暴力」(仕事を制限する・生活費を入れない)
「社会的隔離」(人に会わせない・隔離する・電話や手紙をチェック・外出を妨害する)
これらの行為でいつも圧迫され、びくびくして生活しているのが、DV=「配偶者等からの暴力」です。
■ 対処法:まずは原因を特定することが大切です。これらの問題には必ずはっきりとした「原因」があります。例えば、(1)配偶者が生まれ育った原家族の問題(虐待を受けていたとか、幼少期から大きな心の傷をかかえてきたとか)を引きずっていたり、あるいは(2)配偶者自身に発達障害があって見逃されていたり、または(3)配偶者に他の大きな精神疾患が隠れているなどです。これらの原因を特定して、それに応じた対処法を考えていきます。